「やわらか、大長なす」
日本一の大長なすです
植木町 大長なす農家
石本さん
ふっくら、やわらか生でもおいしい長なす
ビニールハウスに一歩足を踏み入れた瞬間、目に飛び込んできたのは、地面すれすれまで伸びた長なすの姿。長い!想像を超えるサイズの実に近寄ってみると、見つめる顔が映り込むほど艷やかな紫。緩やかなカーブを描くユーモラスな姿に、思わず笑い出してしまいそうです。長さ40~60㎝、日本最大級の特大なすを育て上げたのは、熊本県植木町で、農園を営む石本勝也さん。栽培している「黒紫大長ナス」は、地域一帯に古くから伝わる特産品なのだそうです。「昔から作っていたんだけど、中々知られていなくて。大手メーカーのCMや、全国ネットの人気番組で取り上げてもらい、少しずつ知名度が上がってきました」と石本さん。大長なすの特徴は、と伺うと「ふっくらとやわらかく、えぐみがほとんどないところです。アク抜きの必要がなく、生のままでもおいしく食べられますよ」と教えてくれました。かじってみると、驚くほどジューシー。仄かにリンゴのような甘を感じます。
手間ひまをかけること愛情深く見守ること
「黒紫大長ナス」を栽培しているのは『いしもとファーム』周辺の限られた地域だけ。その理由は、栽培の難しさにあります。通常、なすは蜂や蝶を媒介として受粉しますが、この大長なすは、一輪ずつ手作業で受粉を手伝ってやらなければならないとか。「害虫や鳥に食べられないよう、見守ることも仕事のひとつ。苦労も多いですが、美味しさには、変えられません」と誇らしげな笑顔の石本さんでした。
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合言葉は「味も大きさも3倍」
熊本といえば長なすが有名ですが、ひときわ大きく肉厚な「黒紫大長ナス」は、希少な品種。普通のなすと比べると「味も大きさも3倍」なのだとか。発泡酒のCMで流れた‘‘長なす、長~い‘‘というキャッチフレーズで全国区に!
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生産者の手で交配をお手伝い
1輪ずつ手作業で受粉させるのも、石本さんたち生産者の仕事。真夏は、40度近いハウスの中で、汗だくで作業することも多いそうです。年間を通じて美味しいなすを提供できるのは、こうした細やかな手作業の積み重ねがあるからこそ。
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炒めものに、焼きなすに
生でも食べれる大長なすですが、石本さんのおすすめは天ぷらや味噌炒め。「油との相性は抜群。しかも油を吸いすぎないのでヘルシーですよ」とのこと。BBQの際は、網の上に丸ごと1本載せて焼きなすにするのが定番なのだとか。
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野菜嫌いのお子さんにこそ
食品会社『カゴメ』の調査によると、子どもの苦手な野菜ワースト1位がなす…。「そんなお子さんにこそ、食べてみてほしいです」と石本さん。マルシェや直売会で「子どものなす嫌いが治りました!」と声をかけられることも多いそう。
薬の力でなく人の力で守る。
「黒紫大長ナスは、特殊な品種なので、最低限の農薬は、どうしても必要なんです」と石本さん。しかし『いしもとファーム』では、使用する農薬の量を極限まで減らし、安全な野菜づくりに力を注いでいます。「虫や鳥の害を防ぐことができれば、大量の農薬は必要ありません。そのためには、人の目と手で守ってやること。‘薬の力に頼りすぎず、ハウスの中に入れない努力‘を心がけています」。